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晋平太 4thアルバム『DIS IS RESPECT』リリース記念 ロングインタビュー
(PART 1)

インタビュアー:大前 至(音楽ライター)


──フル・アルバムとしては4作目となる今回の『DIS IS RESPECT』は、前作の『REVENGE』から4年以上ぶりになりますが、『REVENGE』以降の活動を振り返ってみてどうだったでしょうか?
 『REVENGE』をリリースした時は、枚数も結構出たし、ライヴもワンマンとかいろんなところでやったり、テレビの仕事も来たりとか、状況は結構変わっていきましたね。けど、あんまり楽しい思い出がなくて、周りからの疎外感も凄く感じていた時期でもあって。バトルをして勝っても、皆が喜んでくれなくて、なんとなく空回りしだした時期っていうか。一生懸命やってたんですけど、自分自身が独善的だったというか。他の人とも合わなくなったりして、どこか違和感を感じてましたね。


──その状況が変わっていったのはどこから?
 2012年を最後に『UMB』(ULTIMATE MC BATTLE)を引退して、2013年から『UMB』で司会をやらせてもらえるようになってからですね。けど、それも最初は全然上手くいかなくて。最初に司会で行ったところで、チャンピオンと最後にフリースタイルをするんですけど、そのフリースタイルがバチバチのバトルになっちゃって(笑)。去年まではそのチャンピオンとライバルの関係でしたからね。俺はこれ(司会)向いてないなって思って。それまでフリースタイルバトルをやり過ぎてたことで、何も楽しめなくなってたんですよ。

──ちょっとした病気だ(苦笑)
 そうだったかもしれないですね。私生活でもディスられたくないから、隙を作りたくなくて。司会も最初のうちはそんな感じで。けど、予選で全国30何ヶ所とかを回っていくうちに、車で移動したりしながら、結構大変な思いをして予選を行なっている事実に気が付き。例えば和歌山とか行った時に、果てしなく田舎なんですよ。こんなところにバトルMCが来るのかな?って。けど、そこに中学生くらいの子たちが駐車場に溜まってタバコとか吸ってるんですけど。そういう子たちがエントリーしてきて。俺は東京の予選しか出たことなかったんですけど、地方にもヒップホップをやっている仲間っていうのがこんなにいて、そういう子たちが、MCバトルを武器に東京に乗り込んでいくこととか、凄いなって。そうやって旅をしながら、モノの見方が変わっていきましたね。

──そこから、今回、4枚目のフル・アルバムを作ろうっていう流れになったのは?
 ずっとアルバムを作ろうって思ってやっていたんですけど、納得がいく曲が出来ないっていうか。ラップの仕方一つを取っても、音の選び方とか、あらゆる面で壁にぶつかっていて。けど、これは行けるなって思ったのが、(先行シングルの)「CHECK YOUR MIC」が出来てからですね。スタッフとの話でも、シングルになる曲が必要って言われていて。で、そのタイミングでセロリさん(DJ CELORY)にトラックをもらって、これなら行けるかもしれないって。『UMB』で全国を回るじゃないですか。そのMCバトルの会場で共感出来て、皆で一つになれる曲を作りたいなって凄く思っていて。

──今回の『DIS IS RESPECT』では、今名前の出たDJ CELORYやDJ TAIKIといったベテランのプロデューサーが一つのキーになってると思うんだけども、彼らを起用することになった理由は?
 ユタカさん(DJ YUTAKA)主催の『REHERB』っていうパーティがあって、それにはセロリさん、タイキさん(DJ TAIKI)を含めて、名だたるDJが参加していて。そこで、俺もほぼスタッフみたいな感じで一晩中いて、DJプレイを聴いているんですけど。やっぱり分かっている人のDJって違うじゃないですか。ずっとその場にいれるし、ずっと気持ち良い。DJが上手いってことは、彼らの耳が良いわけだから、当然作るトラックもヤバいはずだよなって思って。それで頼んでみて。セロリさんもタイキさんも、あとユタカさんもそうなんですけど、やっぱりベテランのトラックは抜群に良くて。トラックをもらった段階ですぐにライヴで使えるくらい、安定感とかも半端じゃないし。そういうので選んでいたら(ベテラン勢が)増えていきましたね。

──『DIS IS RESPECT』というアルバムのタイトルはまさにMCバトルの姿勢そのものという感じだけども、どのように決まっていったんでしょうか?
 ずっと決まっていなかったんですけど、最後の最後にやっと決まって。日本語ラップで凄く売れたアルバムって言ったら、俺らの世代ではRHYMESTER(ライムスター)の『リスペクト』じゃないですか。それにあやかりたくて(笑)、それで“respect”は入れようって思ってたんですよね。最初は「これはリスペクトの気持ちです」って意味で『THIS IS RESPECT』ってしようとも思ってたんですけど、何か違うなって思って。スタッフと話している時に、自分の中ではそんなイメージはないんですけども、周りから見れば俺は悪口とか罵りの王じゃないですか。そう考えた時に、俺のイメージは“dis”なんだなと。でも、リスペクトがあるからディスってますって。自分では「罵り合いの先の時代」って言ってるんですけど、それを本当に目指しているんで。あと、“dis”も“disrespect”が語源だし、そもそも一つのもんなんだなっていう気持ちですね。




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